最初で最後の恋だから。ーセンセイー

六月は検定試験が続く。

一週おきにある検定試験ももう終わり。

最後の今週末は珠算の検定試験だった。

誰もが小学生のころやったことがある算盤。

私はその時から苦手だった。

数字が並ぶとそれだけで頭が痛くなるのに珠を弾いて計算しろという。

しかも、スピード勝負だ。

「算盤はねぇ・・・練習あるのみかも。」

紗智は珠算の検定試験を受けない。

なぜなら既に一級取得者だからだ。

3歳のころから算盤教室に通っていたのだという。

私も小さなころから色々習い事をしていたが、算盤はやっていなかった。

「私も算盤教室通っとけばよかった。」

「今からでも遅くはないよ??」

「小さい子ばっかりじゃないの?」

「そうかも。」

さすがに小さな子に混じって、しかも自分の方が出来ないのは恥ずかしい。

「自分で頑張るよ。」

「うん。」

「それにしてもちょっと寒くない?」

教室には紗智と私の二人しかいない。

人がいない分クーラーが効きすぎている。

「そうかなぁ・・・?」

「クーラー止めて窓開けよ。」

窓を開いて外を見るとそこからスーツ姿が見えた。

(伊藤先生)

とくん。

心臓が小さく跳ねる。

声を掛ける事ができずにただ見つめていると先生は振り返った。

「珍しいな、教室にいるのは。
自主勉強か?」

「珠算の検定試験が近いから、練習をと思って。」

「頑張れ。」

先生の言葉はいつまでも耳に残った。

(頑張ろう)

合格したら、先生に報告しよう。

生徒としてだとしても先生の誰より近くにいたかった。