くまのプーさんによく似ているので和田先生は生徒からは親しみを込めてプーさんと呼ばれていた。

「和田先生、進学合宿の事を聞きたいんですけど。」

「あー、すまんね。
担当は私じゃないんだ。
伊藤先生に聞いてみてくれ。」

(話掛け辛いな)

私は職員室を見渡した。

どこにも先生らしき姿はない。

(国語科準備室かな。)

私は職員室を出て国語科準備室に向かった。

部屋の前まで来てノックが出来ず立ち尽くす事15分。

内側からドアが開いた。

「入っておいで。」

室内に他の先生の姿はなかった。

「暑かっただろう。」

「・・・はい。」

「もっと早く声をかけてやれば良かった。
・・・お前だと解っていたんだ。」

「・・・。」

今を逃せば聞けないと思った。

「伊藤先生。」

「あの日の言葉の続きを教えて貰えませんか?」

「・・・俺は教師だから。
お前の心を預けるに相応しいヤツは他にいる。」

教師だから。

私は先生にとって恋愛対象じゃないってこと。

「ありがとうございます。
これからはまた、普通に話させて下さい。」

「解った。」

私は国語科準備室を出ていつもの場所に向かった。

独りになりたい時の家庭科棟非常階段だった。

やっぱり現実は物語のように甘くない。

夏が終わったら枯れてしまう向日葵。

向日葵より先に私の恋は枯れてしまった。