紗智は教えてもらいながら編み進めていく。

毛糸は綺麗なエメラルドグリーンだ。

セーターを編んでいるらしい。

出来上がれば既製品にはない、素敵なプレゼントになるのだろう。

「ゆずちゃんも編みものしてみる??」
毛糸分けてあげるよ。」

「私、不器用だし無理だよ。」

「最初は皆そう言うけどやってみたら案外出来ちゃったりするからチャレンジしてみない?

先輩の言葉は上手に気持ちを柔らかくしてくれる。

「やって、みます。」

「何を作ってみたい?」

「私でも作れそうな簡単なのが良いです。」

「そうね、それならマフラーとかどうかな?」

私は紗智に毛糸を貰い、先輩に棒針を借りた。

「まずは練習からね。」

基礎から先輩は教えてくれる。

先輩は教師になれそうだ、と思った。

「そろそろ、フィリング作らないと。
とっても簡単だからゆずちゃん、お願いしていいかな。」

「はい。」

レシピには卵、牛乳、蜂蜜を混ぜ合わせると書いてあった。

確かに簡単だ。

「次はミニタルトの型にアルミ箔を敷いて、生地をつめていくの。」

「紗智もやる~。」

薄過ぎず厚過ぎず、が案外難しい。

終わってレシピの続きを見ると生地の底をフォークで刺してフィリングをタルト型に流し込み、オーブンで二十五分、様子を見ながら焼くと書いてあった。

プスプスとフォークで刺すのはちょっとしたストレス解消に良さそうかもしれない、なんて思いながらやっていると次のフィリングを流し込む作業に追いつかれそうになってしまった。

「後は焼き上がりまで待つだけ。」

「ゆずちゃん、ティータイムだよ!」

「紗智ちゃん、片付けが先ね。」

片付けが終わる頃にはオーブンから甘い香りが漂って来て空腹を刺激した。

「ゆずちゃんは何が好きかな。」

先輩はティーパックを手にしている。

「アールグレイが好きです。」

「ミルクはいれる?」

「はい。」

私はミルクティーが好きだけど特にアールグレイのミルクティーが好きだった。

花のようなアールグレイがミルクで丸く優しくなるのが好きだった。

「皆、ティータイムにしよう。」

個々に分かれていた先輩達も一緒にティータイムが始まった。

焼き上がりのエッグタルトとそれぞれの好きな飲み物とおしゃべり。

他の先輩達も優しくて良い人たちばかりだった。

家庭科部に入って良かった、と思った。