最初で最後の恋だから。ーセンセイー

私はお菓子作りの経験はない。

兼業主婦の母親は忙しく料理すらあまりしなかったし、三つ年上の姉は勉強の虫だったので私は興味が無かったわけではなかったが縁遠いものだったのだ。

「何をすればいいですか?」

「そうね、じゃあまず材料の計量をして貰っていいかな。」

渡されたレシピを見ながら一つ一つの材料をボウルに入れて計っていく。

私の隣で先輩は手際よく次の作業を進めていく。

「見てるだけじゃつまらないよね、やってみない?」

先輩は作業の途中で手を止めて誘いかけてくれた。

「失敗しちゃったら・・・。」

新しいことが私はいつも不安で苦手だった。

「大丈夫。
きっと美味しくできるから。」

ホイッパーでバターを混ぜバニラオイル、粉砂糖を入れて白っぽくなるまで混ぜ合わせる。

バニラオイルを入れると甘い香りがした。

卵黄を入れ更に混ぜ合わせる。

小麦粉、アーモンドパウダーを加えてゴムベラでさっくりと生地を切るように混ぜ合わせる。

アーモンドパウダーは初めて見るお菓子の材料だ。

入れるとサクサクの食感になるらしい。

「お菓子作りって楽しいですね。」

最初の不安はすっかり消えていた。

「ここまでで一端、お休みね。」

レシピを見ると冷蔵庫で一時間寝かすと書いてあった。

「紗智ちゃんは先週の続きしよっか。」

紗智は放ったらかしにしていた毛糸を手に取ると編み物を始める。

私は手持ち無沙汰になった。