「せんせー。
伊藤せんせいってば!!」
家庭科部の入部希望者連れてきた~。」

職員室に入り、紗智が声を掛けたのは伊藤先生だった。

「紗智、顧問の先生って・・・。」

「教えてくれるのは家庭科の吉見先生で伊藤先生は食べる専門だよ。」

紗智が笑って言う。

あの日以来、伊藤先生と話してはいなかった。

「仕事はちゃんとしてる。
須藤、よろしくな。」

私はどういう表情をしていいか解らなかった。

「活動は週一回、木曜日で場所は家庭科室。
詳しいことは部長の汐見に聞くといい。』

「分かりました。」

職員室を後にした私は戸惑いを隠せなかった。

「ゆずちゃん・・・??」

「なんでもないよ。」

「伊藤と何かあったの?」

こんな時、紗智は鋭い。

「何でもないよ。
大丈夫。」

心がきゅっと締めつけられて痛かった。

「ゆずちゃんのばかっ。
どうしていつも何にも話してくれないの?
友達だって思ってるのは紗智だけなの?
そんなに苦しそうな顔して大丈夫なんて言わないで・・・っ。

紗智がそんな風に思ってるなんて知らなかった。

「ごめん、紗智。
ここじゃ話せないから・・・場所変えよ。」

家庭科棟の非常階段に向かった。