テスト前の図書館は普段見かけない人が増える。

冷暖房完備なのは本校舎はここだけだからだ。

職員室でさえ扇風機しかない。

増えた生徒に反して図書委員の業務はいつもより少ない。

カウンターで本を読んでいると古賀君がやってきた。

「今日は俺の方が早いと思ったのに。」

「残念でした。」

「何読んでるんだ?」

「秘密。」

「ずるいな。」

私はパタンと本を閉じるとラックに視線を移した。

一人でこなせる程度しか本はない。

「古賀君、カウンターお願いしてもいいかな。」

「解った。」

ラックから本を手に持って私は本棚に向かった。

(これで最後だ)

そこは自分の背より高い場所にあり、微妙に届かない。

(んっ。)

爪先立ちして手を伸ばしてみるが届かない。

(仕方ない、踏み台取ってこよう)

「貸して。」

すっと本を取ると私が届かなかった場所に難なく本は収まった。

「出来ない事は頼れよな。」

「迷惑になるから・・・」

「俺はお前なら迷惑とは思わない。」

「・・・。」

人を信じる事は大切なものを手にすること。

その代わりにリスクも負うことになる。

「ちょっと来て」

手を引っ張ったまま、古賀君は歩き出す。

誰もいない自習室。

「俺じゃ駄目か。」

「・・・?」

「一人で頑張ることは必要だけど強がってるっていうかお前は危うくて、今にも壊れてしまいそうだから・・・俺が傍にいて守ってやりたいんだ。」

「・・・そんな風に言わないで。
私はそんな風に言われる価値のある人間じゃない。」

私はブラウスの袖を捲った。

「私は・・・私は。」

一歩ずつ古賀君が私に近づいてくる。

学生服を脱いで私に掛けてくれた。