大勢の報道陣に囲まれたリョウが、警察車両に乗り込んでいる。


「どういう事?」

 愛輝の表情が青ざめ、テレビの画面から目を離せずにいる。


「分からない…… 今、祐介さんが確認に向かっているわ」


 愛輝は、ソファーに座ったまま動けずにいた。



 リョウがまさか? 
 真二はどうしているだろうか? 

 愛輝は、真二の元へ行かなければと思い立ち上がったが、同時に祐介が愛輝の部屋へ、深刻な表情で入って来た。



「兄さん……」

 愛輝は、縋るように祐介を見た。


「詳しい事はまだ分からない。ただ、記者の中に覚醒剤を騙して売っては、有名人を脅している悪が居るって事は聞いていたんだが…… 
 そいつとリョウが時々会っていた事は間違い無いらしい……」


「そんな… 真二くんはどうなるの?」

 愛輝は、祈る思いで両手を握り合わせた。


「バンドのメンバーも調べはあるだろう? リョウの事もまだ分からない。愛輝、しばらく真二とは連絡とらない方がいい。ヒカリの事がばれる危険もあるからな…… 真二だって解っているはずだ……」

 祐介が、愛輝に言い聞かせるように言った。 


「いつになったら、真二くんに会えるんだろう? このまま会えなくなったりしないよね……」

 愛輝の心細い声が、今にも消えそうに部屋の中に毀れた。


「愛輝… 真二さんを信じるって決めたんでしょ。調べればすべて分かる事だよ。そしたら必ず連絡してくるよ。今は信じて待つしかないよ!」


 美香が力強く愛輝を見つめた。



「そうだ…… 愛輝。心配なのは分かるが、今はやるべき事をお前もやるんだ……」

 祐介の声は、愛輝を不安の中から少しだけ救い上げてくれた。



「うん……」

 愛輝は噛みしめるように肯いた。


 しかし、頭の中では分かっていても、真二を案ずる気持は消えない。


 勿論、真二が覚醒剤などやっていない事は分かっているが、様々な不安が愛輝の胸の中で渦を巻いていた。