嘘は輝(ひかり)への道しるべ

 真二は、久しぶりに愛輝との楽しい食事のはずだったが、頭の中からあゆみの言葉が離れなかった。

 嬉しそうに話かけてくる愛輝を真二は、心の底から愛しいと思う。

 真二は自分の事などどうでもいい、ただ、のどかの手術だけは無事に終わらせたい。

 そして、誰よりも愛輝を守りたかった。


 真二と愛輝が並んで歩く姿は、どこにでもいる幸せそうなカップルだ。

 歩道橋の上で真二が立ち止まり、信号待ちの車のブレーキランプの光を黙って見ている。


「どうしたの?」

 愛輝が聞いた。


「愛輝、俺の事信じてくれるか? これからも?」


「何言っているの? 当たり前じゃない」

 突然の真二の言葉に驚いた愛輝を、真二は強く抱きしめた。


「ごめん… 俺と別れてくれ……」


「何言っているの? 何かあったの?」


「ごめん……」


「ごめんじゃ分からないじゃない。信じろ、って言っておいて別れたいなんて意味わからないわよ」

 愛輝が真二の胸から離れた。


「しばらく会えないんだ……」


「本気なの? 私、何か悪い事した?」


「そうじゃない! 今は何も話せない…… 俺を信じてくれ。落ち着いたら必ず話すから」


「どうしてよ…… 理由を言ってくれたっていいじゃない」

 愛輝の目には、涙が滲み出た。


「ごめん……」


「どうしてなの? 私はただ、真二くんが好きなだけなのに…… どうしていつも、私の知らない事ばかりが起きるのよ…… いつも、嘘ばっかりで……」


「違うんだ愛輝! 愛輝への気持ちに嘘は無いから……」


「だって、本当の事を教えてくれないじゃない……」


「ごめん…… 送って行く……」


「一人で帰るからいい!」

 愛輝は歩道橋の階段を駆け下りて行った。

 真二は愛輝の後ろ姿を、ただ見ている事しか出来なかった。


 真二は握りしめた拳を力一杯、橋の手すりにぶつけた。