のどかの病室のドアを開けると、愛輝が来るのを待っていたかのように、教科書をまとめ外へ出る準備をしているのどかの姿があった。
愛輝は車椅子を押し、庭の日当たりの良いベンチを選んだ。
のどかはもうすぐ期末テストがあり、勉強に力が入っていた。
英語を教えて欲しいと教科書を持ち上げた。
その下に隠れていた、一冊のファッション雑誌が愛輝の目に留まった。
表紙にはヒカリの笑顔が映っている。
「のどかちゃん…… ファッション雑誌読むんだね?」
愛輝は、雑誌の表紙のヒカリから目を逸らした。
「まあね。女の子ですからおしゃれに興味はありますよ。でも、これはヒカリが表紙だったから、売店で見つけて買っちゃったの」
のどかは、ふっと嬉しそうに笑みを見せた。
「ヒカリのファンなの?」
「勿論。だってキラキラしていて女の子の憧れよ。雑誌とCMしか出ないから、現実に居るのかな? って、思っちゃうけど… そこが又、想像膨らんで気になるんだよね。きっと素敵な人だと思うな」
のどかは嬉しそうに雑誌を手にした。
「そうかな? 私、ファッション雑誌読まないから、よく解らないけど…」
愛輝は興味のないふりをして言った。
しかし、愛輝だってヒカリが嫌いな訳ではない。
ヒカリが褒められれば、自分の事なのだから嬉しいのは当たり前だ……
「それに、堂々と立っている姿が、すごく綺麗で、私の憧れなの。いつか、ヒカリのように立ってみたい……」
憧れている者を遠くに見るようなのどかの目に、愛輝はヒカリが自分である事に恥ずかしさのような物を感じた。
もしかしたら、世の中にはのどかのように、ヒカリに憧れや夢を抱く少女がいるのかも知れない。
ヒカリとして重圧が、愛輝には重く感じた。
そして、のどかに、嘘をついてしまっている事に、胸の奥がチクリと痛み、何も言え無くなってしまった。
「……」
「そうそう、男の子にだって凄い人気よ。お兄ちゃんでさえ、瞳のきれいな子だって言っていたもん」
「えっ! そうなの?」
愛輝は驚いたが、素直に喜べない自分に戸惑ってしまった。
まるで、ヒカリに嫉妬しているかのような複雑な思いを抱えたからだ。
「また、余計な事を話して! ちゃんと勉強しろよ!」
突然の後ろからの声に、愛輝はそっと振り向く。
真二の顔を見ると、なんだか苦しくなってくる……
愛輝にとって、初めて誰かを思って苦しく切ないと思う感情に、まだ、自分の状況がついていけなかった。
ヒカリは愛輝なのだが、ヒカリと愛輝は全く別人のように歩いている気がする。
真二はのどかの頭を軽く叩き、隣のベンチに座りギターを取り出した。
数枚の白い紙を出し、ギターの音を確認するように、紙に何かを書いているようだった。
愛輝は、英語の教科書を開き、のどかに問題を出しながら、真二の弾くギターの小さな音に耳を傾けた。
優しい音が心地よく胸に落ち、愛輝の心を穏やかに変えて行った。
いくつもの偽りを抱きながら……
愛輝は車椅子を押し、庭の日当たりの良いベンチを選んだ。
のどかはもうすぐ期末テストがあり、勉強に力が入っていた。
英語を教えて欲しいと教科書を持ち上げた。
その下に隠れていた、一冊のファッション雑誌が愛輝の目に留まった。
表紙にはヒカリの笑顔が映っている。
「のどかちゃん…… ファッション雑誌読むんだね?」
愛輝は、雑誌の表紙のヒカリから目を逸らした。
「まあね。女の子ですからおしゃれに興味はありますよ。でも、これはヒカリが表紙だったから、売店で見つけて買っちゃったの」
のどかは、ふっと嬉しそうに笑みを見せた。
「ヒカリのファンなの?」
「勿論。だってキラキラしていて女の子の憧れよ。雑誌とCMしか出ないから、現実に居るのかな? って、思っちゃうけど… そこが又、想像膨らんで気になるんだよね。きっと素敵な人だと思うな」
のどかは嬉しそうに雑誌を手にした。
「そうかな? 私、ファッション雑誌読まないから、よく解らないけど…」
愛輝は興味のないふりをして言った。
しかし、愛輝だってヒカリが嫌いな訳ではない。
ヒカリが褒められれば、自分の事なのだから嬉しいのは当たり前だ……
「それに、堂々と立っている姿が、すごく綺麗で、私の憧れなの。いつか、ヒカリのように立ってみたい……」
憧れている者を遠くに見るようなのどかの目に、愛輝はヒカリが自分である事に恥ずかしさのような物を感じた。
もしかしたら、世の中にはのどかのように、ヒカリに憧れや夢を抱く少女がいるのかも知れない。
ヒカリとして重圧が、愛輝には重く感じた。
そして、のどかに、嘘をついてしまっている事に、胸の奥がチクリと痛み、何も言え無くなってしまった。
「……」
「そうそう、男の子にだって凄い人気よ。お兄ちゃんでさえ、瞳のきれいな子だって言っていたもん」
「えっ! そうなの?」
愛輝は驚いたが、素直に喜べない自分に戸惑ってしまった。
まるで、ヒカリに嫉妬しているかのような複雑な思いを抱えたからだ。
「また、余計な事を話して! ちゃんと勉強しろよ!」
突然の後ろからの声に、愛輝はそっと振り向く。
真二の顔を見ると、なんだか苦しくなってくる……
愛輝にとって、初めて誰かを思って苦しく切ないと思う感情に、まだ、自分の状況がついていけなかった。
ヒカリは愛輝なのだが、ヒカリと愛輝は全く別人のように歩いている気がする。
真二はのどかの頭を軽く叩き、隣のベンチに座りギターを取り出した。
数枚の白い紙を出し、ギターの音を確認するように、紙に何かを書いているようだった。
愛輝は、英語の教科書を開き、のどかに問題を出しながら、真二の弾くギターの小さな音に耳を傾けた。
優しい音が心地よく胸に落ち、愛輝の心を穏やかに変えて行った。
いくつもの偽りを抱きながら……


