彼女が消えるその瞬間まで

「え、何?」


彼女が何か呟いたように訊こえたので、訊き返すと、姫百合は誤魔化すように笑っていた。


「わぁ、美味しい!翼くんも食べなよ」



姫百合があまりにも進めてくるので、俺も食べることにした。




サンドウィッチを食べ、ジュースを飲んでいる彼女は、やっぱり黙っていればかわいいと思った。

「よし、ねぇ翼くん」


姫百合は一口水筒の中のお茶を飲むと、立ち上がっていた。



「何?」



俺は彼女の顔を見上げた。姫百合は俺の顔を見て笑い、海に向かって叫んだ。







「よぉーーーし、遊ぶぞー!!!!!」




彼女の大声が補聴器を通して耳に響く。


これはもはや、雑音とでも呼べる音だった。



「遊ぶ?ガキじゃないんだから」



俺は、肩をすくめてお茶を喉に流し込んだ。