彼女が消えるその瞬間まで

「いたくない…訳ない」



さっきまで震えていた言葉が、スパッと出ることが出来た。


自分でも驚いているぐらいだ。




「ふふっ、じゃあーさっきのことはなかったことにしてあげる!翼くんはもっと自分に自信を持ちなさい」




彼女はてへっと舌を出し、いつの間にか俺の隣に立っていた。




「あ…ありがと?」



なぜか、疑問形になってしまった。やばいやばい。





「なんで疑問系?でも、どういたしまして!さて、帰ろっ!翼くん」




彼女は“ドラマの再放送見逃しちゃう”とどこかの主婦的なことを口に出しながら、ゆっくり歩を進めた。





俺は彼女の背中を少しだけ見つめていた。





その小さな背中は、ほんの少し、大きく見えた。