彼女が消えるその瞬間まで


俺は当時3歳の頃、ピアノと出逢った。



母さんの友達が世界で活躍するプロのピアニストで、その演奏会に行ったことがきっかけだった。



俺は、その奏でる音に一瞬で魅了された。




静かなところは、神秘的で優しい音。



そして、そこからクレッシェンドをして華やかに盛り上がるところ、フォルテシモやフォルテピアノの壮大さ。



彼女のアーティキュレーションは完璧だった。




それは3歳の俺でも分かることだった。




ホール全体に響きわたるその音は、一瞬で俺を虜にさせた。





俺はそんな彼女に憧れ、あんなピアニストになりたいと思い、ピアノを始めたのだった。