大体、こいつのチキンは度が過ぎている。


毎日挨拶できない、目が合ったらすぐに逸らしてしまう、連絡先を聞こうにも緊張してだめ、他にもたくさんあるが一つ一つ挙げればキリがない。

人に相談する以前の問題だ。


恋愛をするのは勝手だけど、バイト仲間に、しかも勤務中にその悩みを打ち明けるって常識的に考えてどうなんですか。



「寺島(てらしま)さん、お客さんきましたよ」


「んー」


「ちゃんとしてくださいね」



女子高生らしき二人組が入ってくる。
寺島さんを発見した途端、きゃっきゃと騒いでは携帯をポケットから取り出し、親指をスライドさせた。


おうおう、ツイッターですか。
存分に呟いてやってください、このヘタレ男のことを。



「あのさ、小原さん」


「はい?」



眉間にしわを寄せると、寺島さんは少しあたしに近づいて、こっそりと声を潜めた。



「僕…、もしかして悪口いわれてるんですかね…」


「は?」


「だって、あの子たち、僕のほう見て笑ったりしてるから…、何もしてないよね。何でなんだろう…怖いなあ」



お前のが怖いよ。

どんだけネガティブなんだよ。