突然ぎゅっと手を握られ驚くと、悪戯そうに歯を見せて笑った。
住宅街に落ちていくオレンジ色の太陽を見つめてリコの世間話に笑いを零していると、あるお店が視界に映った。
「リコ、あの店で転んだよな」
「え?」
「覚えてない?」
たしか二年前、ネックレスが欲しいといって入ったあのお店。
………あれ、二年前って。
「ごめん…、覚えてない」
表情を曇らせるリコを見て、しまったと後悔する。
転んだのは前のリコだった。今俺の隣にいるリコじゃない。今の彼女には俺といた記憶はほとんどないんだった。
「あ、いや、あの、そういえば、リコの両親にも挨拶行かないとな?」
上手く話を逸らしたつもりだが、少し目を離している間に、リコが眉間にしわを寄せて頭を押さえていた。
どうしたのかとケーキが入った袋を地面に放り投げ、彼女の両肩を掴む。
「どうした!?リコ!?痛いのか!?」
「っ、か、カケル…、あたし…っ」
何かを言おうと口を動かせていたが、リコは意識を失ったらしく、目を閉じたままぴくりとも動かない。
焦りで汗ばむ手で必死に携帯を使い、急いで病院に電話をかける。
連絡してからすぐに救急車がきた。

