何とも理解不能な言葉に、首を傾げるしかなかった。
彼女は記憶喪失で、俺は他人同然で。
記憶が戻ってこない限り、ほんの数日前の関係には決してなれないというのに。
リコの考えていることは、いつもいつも他の人とは外れていた。
「……え、どういうこと?」
「カケルさんは今までどおりでいいってことですよ。どうせそのうち思い出すんです、同じことでしょ?」
「今までどおりって…」
目の前にいるのはたしかにリコだ。
でも、俺を好きなリコではなくて、今のうちは彼女でもなんでもないただの一ノ瀬リコという人間だ。
今までどおりに振舞うには、どうしても無理があった。
「あたし、カケルさんを一目見たときから、いいなって思ってたんです」
「っ」
"実はね、初めてカケルくんに会ったときから、いいなって思ってたの"
まるでそっくりだった。
高校生の頃、俺に告白をしてくれたときに彼女が口にした言葉と。
それがきっかけで付き合い始めたのだから。
「昔のあたしとは少し違うかもしれないけど、それでもあたしはあたしです。だめですか?」
「だめっていうか、その…、俺は、まだ気持ちの整理とかついてなくて…」
そう声に出してみて、はっと気づいた。

