それでも会いたくないなんてことはなくて、リコの病室へ足を運んだ。

リコが好きだったチョコプリンを買って。



「………お、おじゃまします…」


「あ、カケルさん。来てくださったんですね。いらっしゃいませ」



部屋に両親はいなくて、リコ一人だった。

変わらない彼女の優しい笑顔に胸がちくりと傷むが、この交通事故で一番つらいのはリコ自身なんだと思うと、何とも感じない。


軽く頭を下げて、買ってきたチョコプリンを差し出した。



「これ、よければ、ぜひ」


「いいの?ありがとう!好きなのこれ!」



ぱあっと花が咲くように満面の笑みをみせる彼女を見て、俺も綻ぶ。


けれど、やっぱり俺の知っているリコではないんだと、どこかで感じた。
当然といえば当然なんだろうけど。



「あー…えっと、リコ、さん…て、呼んでもいいですか」


「リコでいいよ」


「え」



驚く俺に、リコはくすくすと笑いを零した。



「あたしとカケルさんは恋人だったんですよね。でも、あたしはそのことを忘れてしまっている」


「………そ、そう、ですね」



あまりにもストレートすぎて、少しうろたえてしまった。

そんな俺に構わず、リコは得意げな顔をしてある提案を持ち出してくる。



「じゃあ、忘れたままは難しいかもしれないけど、普通に恋人として接すればいいんじゃないかと思ったの」