目の腫れが引いてからリコがいる病室へ戻ると、俺がプロポーズしたときに贈った指輪を指でそっと撫でていた。
「これ…、さ、いつ…くれたの?」
「………最近」
どうやらリコは9月から11月の記憶が失っていたことに気がついているのだろう。
一瞬目を伏せ、こちらを見た。
「もう一度、聞きたいな」
そういってリコはぎこちなく微笑む。
俺は緊張であまり鮮明に思い出せないプロポーズのときの言葉を、なんとか一言ずつ頭の中に浮かべた。
不思議と恥ずかしさはなくて、リコの綺麗な瞳を見つめ、口を開く。
「………正直、この先リコを笑顔のままにさせる自信はありません。泣かせたり、怒らせたり、させてしまう、と思います」
「うん」
「だけど、誰よりも、幸せにさせる自信だけは、あります」
「おお」
「………誰よりも…、……あ、」
『愛してます、結婚してください』
あとそれだけの言葉を声に出して伝えるだけなのに、どうしても喉がつっかえてしまって、言えなかった。
"愛してる"
は、消えてしまったあの彼女に、特別に贈った告白だから。
「………カケル?」
君に、伝えた言葉だから。
「愛してる」は、いえなかった。
それでも君の笑顔は、
やっぱり今も昔も変わらない。

