「アイツ、とは?」
心の内で呟いたつもりだったが、口に出ていたらしい
亜紀はまだアイツに会ったことはないのか
丁度いい、亜紀にも知ってもらうべきだからな
何かとあそこは使える
『亜紀、出掛けるぞ』
食器をシンクへと置いて洗うと、あたしは玄関へと歩いて行く
亜紀は車の鍵を持ってあたしの後ろを着いてくる
「どこへ行くのですか?」
『あたしの言う通りに進んでいけばいい』
そういうと「分かりました」と言い、車を発進させた
あたしの指示通りに進んでいく車は10分もしないうちに、止まる
「探偵事務所?まさか、探偵に見つけてくれだなんて頼むのですか?」
『お前も、この場所を覚えておくといい。探偵事務所なんて表向きだ』
あたしは足を進め、表口から堂々と入る
前回来たときは夜間だから裏口から入ったが、今は昼間
営業をしているのにわざわざ裏口から入る意味はない
中に入ると、今まで作業していた社員4人が一斉に客のあたし等に目を向けては、再び作業を進める



