零度の華 Ⅱ




「アイツ、とは?」


心の内で呟いたつもりだったが、口に出ていたらしい

亜紀はまだアイツに会ったことはないのか


丁度いい、亜紀にも知ってもらうべきだからな


何かとあそこは使える


『亜紀、出掛けるぞ』



食器をシンクへと置いて洗うと、あたしは玄関へと歩いて行く

亜紀は車の鍵を持ってあたしの後ろを着いてくる



「どこへ行くのですか?」


『あたしの言う通りに進んでいけばいい』


そういうと「分かりました」と言い、車を発進させた

あたしの指示通りに進んでいく車は10分もしないうちに、止まる



「探偵事務所?まさか、探偵に見つけてくれだなんて頼むのですか?」


『お前も、この場所を覚えておくといい。探偵事務所なんて表向きだ』


あたしは足を進め、表口から堂々と入る


前回来たときは夜間だから裏口から入ったが、今は昼間

営業をしているのにわざわざ裏口から入る意味はない



中に入ると、今まで作業していた社員4人が一斉に客のあたし等に目を向けては、再び作業を進める