零度の華 Ⅱ






「鎖(チェーン)。いや、橘ヒロの彼女さんからですか?」




1歩1歩あたしに近づいてくる亜紀に、答えることができない



体が揺らいだ


亜紀は慌てた様子で、倒れるあたしの体を支えた




「一体、どうしたんですか?今日の零(ゼロ)はおかしいですよ」


『フフッ。まさか、ここまで痛めつけられるとは......』



下を向き、自嘲しながら言う




「電話の相手ってわけではありませんね」




あたしは誰かは答えず、自分の体に鞭を入れて自力で立つ



昨日の今日で三度も吐き気に襲われるとは、あたしも弱くなったもんだな





亜紀に背を向ける





『少し寝る』




一言残し、あたしは1歩を踏み出すと肩を掴まれ振り返させられる


そして、そのまま亜紀はあたしの唇に自分の唇を重ねたのだ




触れるだけのただのキス