「鎖(チェーン)。いや、橘ヒロの彼女さんからですか?」
1歩1歩あたしに近づいてくる亜紀に、答えることができない
体が揺らいだ
亜紀は慌てた様子で、倒れるあたしの体を支えた
「一体、どうしたんですか?今日の零(ゼロ)はおかしいですよ」
『フフッ。まさか、ここまで痛めつけられるとは......』
下を向き、自嘲しながら言う
「電話の相手ってわけではありませんね」
あたしは誰かは答えず、自分の体に鞭を入れて自力で立つ
昨日の今日で三度も吐き気に襲われるとは、あたしも弱くなったもんだな
亜紀に背を向ける
『少し寝る』
一言残し、あたしは1歩を踏み出すと肩を掴まれ振り返させられる
そして、そのまま亜紀はあたしの唇に自分の唇を重ねたのだ
触れるだけのただのキス



