零度の華 Ⅱ





背中に住む大きな傷が疼く


気分が悪くて吐きそうだ




ネットを閉じ、携帯電話を握る手に力は入った



「羽空?」


名を呼ばれ我に返る




亜紀の手にはトレーが握られ、その上にはハンバーガーとドリンクが並んでいる





「大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ」


『問題ない』




どれだけ、雲雀や雲雀の父親に恐怖を刻み込まれているのかが分かる


怒りをぶつける相手がいないことにやるせない





「何かありましたか?」


『いや、何でもない』


「そんな顔に見えませんよ」


『ほっとけ』




話せば、あたしの弱みを握られることになる


そこまでするほど、あたしだって余裕はない




あたしは渡されたドリンクを1口飲む



どうやら中はコーヒーのようだ




苦味が口に広がり気を紛らわしてくれる


コーヒーのお陰で、少し心が落ち着きを取り戻した