「なぁ…、小学校5年生のとき…市営音楽堂で会わなかったか?」 あの日は楓さんのピアノリサイタルだった。 あの子はそこに来ていたんだ。 「小学校5年生…」 彼女が寂しそうな表情を浮かべる。 「私、中学2年生からの記憶しかないの。」 思わぬ告白に困惑する。 記憶が…ない? 「私、気づいたら病院にいて、そこからの記憶しかないの。ごめんね」 辛そうに、寂しそうに呟く。