少しの沈黙のあと、
「…たのしかった。」
と、誰かがつぶやく。
思わず周りを見渡すけど、誰もいない。
彼女が言ったのか…?
恐る恐る聞いてみる。
「た、楽しかったって?」
「…あなたのピアノ、優しいんだけど力強さを持ってて、描いてて楽しかったよ」
やっぱり彼女だ。
紛れもなく彼女が話している。
びっくりして固まっていると、彼女がスケッチブックを閉じてこっちに歩いてきた。
「あなたの名前は?」
「俺は、柴咲 昴。昴って呼んで。…君は?」
「昴…ね。私は、朝比奈 楓音。楓音でいいよ。」
朝比奈…。その苗字にドキッとする。
ただ偶然…か?
気になって聞いてみる。
