『美術室の天使』に出会ってから2週間程したある日。
「おい!昴!大ニュース!」
翔が休憩中に走ってやってきた。
「なんだよ…」
「実は…。俺達のピアノがモデルになって『美術室の天使』が絵を描いたんだ!」
「は?」
「だから!前、会ったときに描いてた絵が張り出されたんだよ!」
理解ができないまま、俺は翔に連れられて、美術室の前にやって来た。
「す、すげぇ…」
美術室の前には、最近『美術室の天使』が描いたと思われる絵が飾ってあった。
鮮やかなもの、少し暗いもの、色々な表現に惹き付けられた。
いつも見ている校舎や、誰もいないグラウンド。
お昼で賑わっている中庭や、静かに佇む樹木。
彼女の絵の中では一つ一つが生きているように思えた。
「昴!こっち!」
翔に連れてこられたのは、展示してある絵の一番右の『新作』と書かれた札の下にある2枚の絵。
題名は、『ピアノの世界』
驚いた。
片方は情熱的な火に包まれた妖精。あの日、翔が弾いていた曲の雰囲気にそっくりだ。
それと…
「な、なんだよ…これ…」
その隣にある作品は…
俺があの日、描いていた音楽の世界そのものだった。
美しい緑の草原に吹き抜ける涼しくて綺麗な風。そこに佇む人。
