夏休み最終日だからといって、
いつもとなんら変わりない。

駄菓子屋のおばちゃんは今日も膝の上の猫を撫でてるし、
小学生は今日も元気に走り回ってるし、

あと隣にいる優ちゃんは今日もうるさいし。



きっも楽しむことに執着していないからだろう。
たとえ大したエピソードがなくても損したと思わない。

ついでに言うと得したとも思わない。






「あと5分で電車来るって」


優ちゃんが壁の時刻表を見ながら言う。

駅は静かで、ホームには数人しかいない。


近くのベンチに腰かけると、優ちゃんも隣に座った。

少しの沈黙。

間を風がゆるりと通り抜けて、これはこれで心地いい。


ふと近所の大学の広告が目にはいって、

私はやっと重大なことに気付いた。



「…優ちゃんてさ、受験生やん」

「うん」

「勉強してるん?」

「え、してるように見える?」


聞いた私がバカだった。

多分この感じじゃ進路さえ決めてないんだろうと、
容易に想像がつく。


「遊びにいってる場合ちゃうやん…」

「ええねん、それとこれとは別のハナシ」


何が別なのかはよくわからないけど、
これ以上この話をすると嫌がるだろうからやめておこう。



「まあ、なんとかなるやろ~」


でた、優ちゃんの口癖。


そう言って結局なんとかしてしまうのだから、つい感心してしまう。


「それより映画!なに観る?」

「ホラー以外」


急にしゅんとする優ちゃん。

ホラー観る気やったんか。