……ずっと憧れていた。

母が話してくれた海の上の世界。

『人魚は15歳の誕生日になった夜、海から出ることを許される。』

幼い頃に聞いた母の話す私の知らない世界は、幻想的で、綺麗で……。

海の中だけがこの世界のすべてだと思い込んでいた私は、その世界に魅了された。

今思えば、馬鹿馬鹿しくて、くだらない。

全てを綺麗ごとで包んだ世界。

そこで生きている人間はもっともっと醜い。

そのことに気づいたときはもう遅すぎて。

貴方と過ごした幸せな日々を否定できるほど、私は大人になれなかった。

でも、私は後悔してない。

貴方のことを愛しているから。

だから、……