いじめ ―きっかけは―


「おはよ!」


教室のドアを開けた途端、大声で挨拶する綾実。


「あ、綾ちゃん。おはよ…。」


返ってきたのは小さな女子の声。 


「あ…おはよ…男好きの有馬さん…。」


この声…柚花じゃないの…?


私は綾実の肩越しに教室を覗いた。


黒板の前にいた柚花と目がバッチリ合った。


柚花の発した言葉が頭の中でぐるぐる。



男好きの有馬さん
…とこ好きの有馬さん
有馬さん?


みんながこっちを見ている。


「柚花。何言ってるの…。」


「聞いてー!
 あたしが好きな男子有馬さんに言ったのに
 平気で仲良くしてたんだよ?
 酷くない?」


愛美がそう言ったら、
ざわざわ…
みんなの小声が重なる。


今のほんと?
本当だったらマジで最低ー
可愛いから調子にのんじゃねーし。


「最低!」