いじめ ―きっかけは―

「え…いや、愛美画鋲だけだって
 言ってた。
 ………それと。」



言い辛そうに翼は続けたけど、
私が気になる事は…ね…。



「菊の花もでしょ?
 …柚花は菊の花も愛美だって
 言ってた!」



私は勢い込んで翼に言うと
翼は柚花…!と呟いた。



「柚花ってどの子?」



声を低くして私の方に耳を傾けた。
私は後ろを向いた。



「えっと…
 あの、今勉強してる眼鏡の子の
 後ろの席の…ショートカットの似合う女の子。」



「えーとー…あぁ、あの子か…。」



翼は見つけられたらしい。
少し眉を寄せて、柚花を見つめていた。



「そいつに…何て言われた?」


「メールでだけど…。
『画鋲と菊の犯人、誰だか分かった。』
 昨日、そう来たの。

 それで、誰って聞いたら、
 愛美だよって…。」



「俺…その柚花って人が嘘ついてると…
 思うんだけど。」



翼がそう言った。




「柚花は嘘付かないよ?」



「分かんないだろ?
 大体、お前はお人好しすぎるんだよ…。」



呆れたように翼が言った時、
ガラガラッ…先生が入ってきて
みんなは一斉に席を立った。