いじめ ―きっかけは―

「あ…いや。
 朝、み…いや、こいつが痛いって
 声あげたからどうしたって言って
 ヘルプしたんですけど…。
 両足に画鋲が刺さっていたそうです。
 で、上履きの中に入っていたそうです…。」



「…それ本当ですか。」



怒りを露わにした先生の声が私には怖かった。



「…はい…。
 だから今朝遅刻してしまいました…。」



しょんぼりと俯いて私は言った。



「ああ…本当ですか…。
 そういうことで遅刻するのなら
 また別ですので、
 次回そういうことがあったら
 言って下さい。
 …いや、あってはならない事ですね…。」



一時穏やかになりかけた先生の声は
また厳しく尖がり始める。



「そうです。
 次回あってはいけません。
 心当たりがあったりする人は
 授業が終わった後でも
 何時でも良いので教えて下さい…。」



「はい…じゃあ国語㊤の教科書の
 最初のページの詩、ありますね───」



こうして堅い空気の中、
授業は始まった。



酷い…酷いよ…。



泣きたい気分だった。
多分教科書をめくる手が
震えてた───