「明日……、ブラマはどのくらい混むんでしょうね」
動き出した車の中で、見慣れた流れていく景色を眺めながらなんとなくそんなことをつぶやく。
あんなに大きなお店だし、食料品だけじゃなくてクリスマスプレゼントを買うために幅広い年齢層のお客様が訪れて、衣料品や雑貨やおもちゃなど、ありとあらゆるものが飛ぶように売れるだろう。
それを考えると、明日は本当にうちのお店にお客様が来てくれるのか不安になった。
「きっと駐車場に入り切らないくらいの車が溢れて、道路も混み合うでしょうね。相当の集客があるはずです」
「亘理さんは不安になりませんか?うちのお店に、みんなちゃんと来てくれるかなあって」
元々ブラマの社員だった彼なら、ブラマならイベントごとにどのくらいの集客を見込めるのか知っているはずだ。
あまり感情を顔に出さない亘理さんは、そういうマイナスの気持ちは見えないようにしているんじゃないのかな。
「不安がないと言えば嘘になりますけど」
と彼は運転しながら言葉を続ける。
「今までやってきたことは、それなりに自信を持ってます。俺だけじゃなく、みんな頑張ってきたじゃないですか」
「……そうですね。みんな変わりました、亘理さんのおかげで」
「俺は大したことはしてないです」
何言ってるんですか、と私は半分呆れてしまった。
彼はいつも謙遜するけれど、ここまで引っ張ってきてくれたのは紛れもなく亘理さんなのに。
「俺のおかげでこんなに変わったんだ」ってドヤ顔しても、受け入れられそう。それをしないのが彼のいいところだ。
「明日はブラマのことは考えずに、来てくださるお客様のことだけ考えて頑張りましょう」
「……はい、頑張ります」
「愉快なトナカイさん、期待してます」
「─────やめてくださいよ」
ふくれっ面で運転席を睨むと、目は合っていないのに彼は楽しそうに笑っていた。
こんな時間がずっと続けばいいのに、と思っていた。
その時までは。
車を降りるまでは。