「戻りましたー!」

と、ちょうど通用口から入ってきたのは青果担当の社員さんだ。
彼は両手で抱えるのがやっとというくらいの大きな箱を持っている。
急いで支えようと駆け寄る。

「おかえりなさい!大丈夫ですか!?」

「瑠璃ちゃん、ありがとう!このままいったん事務所に運んでいい?」

「はい、分かりました」

大熊さんと私とで協力して、その大きな箱を三人で運ぶ。
ドサッと無人の事務所の机に箱を置くと、大熊さんが何かしらと中を覗き込んだ。

「あら、花苗のポット!こんなにたくさん?」

「うん、亘理さんに頼まれてね。近くのホームセンターで買ってきた。これを店の周りにうまい具合に植えてくれって」

「可愛いじゃない。たしかに外は殺風景だものねぇ」

どうやら私の知らないところで、亘理さんはしっかり社員さんと連携してお店を立て直すための準備を着々と進めているらしい。

早速また外へ行こうとしている社員さんの腕をとり、大熊さんがにっこりと微笑む。ここは私に任せて、と。

「ガーデニング歴かなり長いのよ、私。だからやらせてちょうだい!」

「えぇ!大熊さん一人で大丈夫ですか?」

「任せて〜、得意なのよ〜」

「じゃあ俺は外の看板をちょっと塗り直してくるかな!」

もう、いちいち業者さんに頼ると経費がかさんでとんでもないことになるからと、ほぼ出来ることは内輪でやっている。
その亘理さんの考え方が浸透しつつあり、大熊さんたちは意気揚々と事務所を出て行った。

気のせいかもしれないけど、やっぱり前よりはみんな生き生きとしているように見える。
閑古鳥が鳴いている現状に何もせずにただやり過ごしていた時期よりも、出来ることはやらないと、って気持ちを切り替えて自分に出来ることを探していくように変わったのは大きい。