私が今現在勤めているスーパー『鮮食館コマチ』は、そんなに規模は大きくない。
大型店はほとんど市内に点在しており、私のいる店舗は市外にある数少ない小型店とでも言おうか。

ただ郊外にあるので、時間帯によっては車のないお年寄りや主婦でわりと賑わっていた。
子どものためにと設けた小さなキッズスペースにも可愛らしい笑い声が聞こえるくらいに、お客様はまぁまぁ入ってるなという印象を残すほどだった。

派手ではなくとも、着実に地域に根付いて働けるお店。
顔見知りだけでなく、常連さんに至っては名前も顔も住んでるところまで一致してしまうくらいのお客様だっている。

「いつもありがとね」と声をかけてもらえるだけで頑張ろうって思えた。
あぁいいな、人とこうして触れ合って他愛のない話で交流しながら働けるっていいな。
そう思っていた。


━━━━━少し前までは。

そう、それは、少し前までの話。


今は……というと。






「はぁ〜……。ヒマですね……」


学生バイトの紗由里ちゃんが、さっきから何度も同じ棚の在庫をチェックしている。
彼女はため息まじりに「ヒマ」と私に訴えてくる。
おそらく三十分に五回は言ってるんじゃなかろうか。


「紗由里ちゃん……ヒマって言っちゃダメ。現実になるよ」

「瑠璃さん、もう現実です」

「うん……知ってる……」


彼女が彼女なら私も私だ。
ずーっと同じことをしているのだ。パスタコーナーの棚換えである。なにしろやることがないのだ。

賞味期限が近い食品は手前に出し、逆に期限が遠いものは奥へ。これは仕事の基本なのだけれど、もう毎日隅々までチェックできるほど時間が有り余っており、おそらく店内どこを探しても賞味期限が前後して配置されている商品など見つけられないだろう。
従業員全員が暇を持て余しているからだ。


ここニヶ月、お客様の数がめっきり減ってしまったのだ。