ちなみにですが、と亘理さんが腕を組んで私を見下ろす。
威圧感はまったくないけど、なんか企んでる顔をしているからちょっと怖い。

「本番までにお客様を集められるかどうかの問題が発生しませんか?」

「……そう来ると思ってました」

「なにかアイデアあります?」

エプロンのポケットから、手のひらサイズの手帳を出してカレンダーを彼に見せる。
のぞき込むようにして手帳を見つめる亘理さんに、ボールペンで何日か印をつけて日付を示した。

「クリスマスまでに、できれば週に一回か二週に一回、子ども向けのお料理教室イベントみたいなものをしたいなと。クリスマスパーティーに使えそうで、それでいて子どもにも作れそうな簡単なレシピをいくつか用意しておいて、親子で楽しく作れて見た目も華やかなメニューをみんなで作るっていう……」

ここでようやく、半分くらいしか開いてなかった亘理さんの目がしっかりと見開かれた。

「……なんか、とても楽しそうですね」

「ですよね!出勤前に児童館や公民館に行って、イベントに使えそうなネタを探してきたんですけど。クリスマスとか関係なしに、親子のお料理教室が人気みたいで、いつもすぐに予約がいっぱいになるって聞いたんです!」

専業主婦だけじゃなく、働くママさんも参加できるように平日以外にも土日でいくつか実施日を設けたら、あっという間に人が集まるような気がする。

「料理教室の講師に関しては、さっきちょっと調べたら派遣会社にそういうもので募集をかけられるって見つけたので、たぶん募れば誰かしら来てくれるかなと。アシスタントとしてうちからも従業員を出して、盛り上げていけたら……」

「いいですね。今の時代、若いママさんたちはSNSを活用して口コミで評判も広まりますし。ただし失敗は絶対に出来ませんけど」

イベントの話は、亘理さんもとても乗り気だった。
するすると話が進み、彼が本社へ行く的に計画書を持ち込んで、なるべくすぐに実行できるようにすると決まった。

次の休みには本社へ行くと話していたから、おそらく間もなくだろう。
イベントのための呼び込み期間もあるのであまりもたついてもいられない。