「売り場を探してる人がいたら、積極的に声をかけてみましょう。お子さんを連れてる方がいれば、優しく笑いかけてあげましょう。混む時間帯も増えるでしょうからなるべく通路にワゴン商品は置かずに、陳列棚の工夫も必要になるかと思います。それはまずどのくらい集客が増えるか様子を見てから、みんなで考えていきましょう」

「はい、分かりました」

頑張りましょうね、というとても前向きな言葉で締めくくられ、亘理さんは休憩室を出て行った。


もうみんな情報番組なんかは見ておらず、大きな声で檄を飛ばされたわけでもないのにやる気満々になっている。
いつの間にか部門別に分かれて、ディスプレイの変更案を出し合っていた。


「いいわねぇ、亘理さん。前の店長とは違うタイプだけど、やる気に満ち溢れてるわ」

と、隣に座っていた浜谷さんがなんだかうっとりした表情で頬を染めている。
でしょでしょ、となぜか大熊さんが自慢げに鼻を鳴らし、私の背中を後ろからバンバンと叩く。

「なんてったって瑠璃ちゃんが好きになった人だもの!」

「お、大熊さーん!やめてー!!」

恥ずかしすぎて両手で顔を覆っていると、パワフルなおばさん二人は満足そうに大きく口を開けて笑っていた。
なるほど、どちらかに話せば必ずもう片方に筒抜けになるシステムというわけか。それを認識して、気をつけようと心に留める。


「さ、私たちも入れ替わりの確認と、混雑時間のチェッカーとキャッシャーのタイミングをもう一度打ち合わせておきますか!」

気を取り直した大熊さんが、レジ部門のみんなに声をかけて輪を作る。
その中に入って打ち合わせ内容をメモしながら、どんどん結束が固まっていくコマチの絆に頬が緩んだ。

これはきっと、亘理さんの力だ。