「まさか、店舗に?」

「はい、直接うかがいます」

「いえ、それには及びません!お客様には私から伝えますから」

「どんな内容にするかにもよりますがたぶん受注できると思いますし、困ってるならなおさら協力してあげたいじゃないですか」


こうなると、私には止められない。
なんの迷いもなくお店へ出向こうとする彼を止めるすべはない。

何も鉢合わせになることもなかったのに。
なんで、涼がお弁当の注文なんて雑用みたいなことを─────


「お待たせ致しました、店長の亘理です」

「あ!どーも、わざわざすみません!」

お惣菜コーナーをウロウロしていた涼をキャッチした亘理さんは、簡単な自己紹介を済ませたあとさくさくと話を進めていく。

「予算の確認と、料理のご希望をお伺いしてもよろしいですか?」

「たぶん男ばかりの集まりになりそうなんで、できればボリュームある肉々しい弁当がいいかなー。予算は……」


二人が話しているのを、私は後ろの方でヒヤヒヤしながら見守る。
涼が余計なことを言わないように、肝を冷やしながら見ているしかできない。

……神様の意地悪!


「ちょっと担当の者がもう帰ってしまっているので、料金に関しては明日ご連絡します。お弁当自体は、こちらでご用意させていただきます」

「本当ですか!助かりますー。ありがとうございます!」

しばらく話し込んでいたが、どうやらお弁当の注文は成立したらしい。
涼の顔がパッと明るくなったのが見えて、やっと彼が帰ってくれると違うところでホッとした。

「あ、連絡先、ここに載ってますのでよろしくお願いします!」

思い出したように涼がスーツの上着から名刺を出して、亘理さんに恭しく渡す。
両手で受け取った亘理さんは、名刺に目を通してすぐに何かに気づいたみたいに私に視線を向けてきた。

その視線をまっすぐ受けて、耐えきれなくて目を逸らす。