私を含めていつものクリスマスのように緩く構えていた従業員がほとんどだったから、こんなに大盛況に終わるなんて誰も予測していなかった。
きっと亘理さんも、ここまでとは思ってなかったはずだ。

「どの戦略が当たったのかは分からないですが、今回はこれでひとつクリアですね。まだこれからもお店は続いていきますから、どのようにお客様にアプローチしていくか考えないといけません」

大真面目な亘理さんらしく、頭の中はその先へ向かっているようだ。

せっかく成功したクリスマス戦略を無駄にしないためにも、次々にやってくるお正月や節分やバレンタインデーなどのイベントも味方につけていかなくてはならない。

今回のことだけでぬか喜びしているわけにはいかないのだ。


「そういうわけなので、白石さん。時間もありませんから、明日はこれまでのお正月の売上傾向や、世間の需要をしっかり調べてもらえませんか?存分にマーケティング力を発揮してください」

キリッとした顔つきで仕事を振られ、私はガッカリしながら彼をひと睨みした。

「もう明日の話ですか。しかもマーケティングとか……全然自信ないです……」

「なに言ってるんですか、ちゃんとできてますから自信持ってください。きっと、白石さんが以前働いていた職場では、有能な人材が辞めてしまったと嘆いてると思いますよ」


たぶん亘理さんは亘理なりの激励の言葉として私に投げかけてくれたんだということは、分かっていた。
それでも、どうしても前の職場の話をされると、自然と表情が曇ってしまう。

「そんなわけ、ないです」と暗い口調で言い返したら、案の定、彼は怪訝そうな表情を見せた。

「そんなに嫌な思い出しかないんですか、以前働いたところに?」

「仕事は……楽しくやってましたよ」

「仕事だけ?」