最初は本当によろしくする気なんてなかった。
なのに何故かその日から毎日欠かさず病室に顔を出し、勝手に他愛ない話をして帰っていく。
『また来るね』と笑いながら。
美姫と真姫の話は単なる世間話から学校で今日あったこと、家族のこと、友達のことと様々だった。
外で遊ぶのが好きな美姫と引っ込み思案で読書が好きな真姫。
歌を歌ったり楽器を演奏したりするのが好きで将来は音楽の学校に行くんだって意気込んでた美姫と、絵を描いたりモノを作ったりするのが上手くて美術の大学に入りたかった真姫。
なにからなにまで正反対なように思えて、実際はとても良く似た姉妹だった。
でも私は知っている。
本当は逆なんだってこと。
歌や演奏が上手いのは真姫の方だし、美術が得意なのは美姫の方だった。
人の迷惑も考えず病室に楽器を持ち込み生演奏を披露してくれたどこぞのバカがいたから。
そろそろいい加減ここが病室なんだってことに気付け。
そして目の前に寝ている女の子が体が弱い病人だってことを察しろ。
それから目障りだからとっとと消えて。
………それが言えたらどんなにか楽だろう。


