「名前は?」
しつこく聞いてくる美姫。
そんなにしつこくされたらこっちだって意地でも教えたくない。
「教えない」
「えーっ!ずるいよー!私、教えたじゃん!」
「だから?別に聞いてないし、興味もないから」
「なにそれーっ!」
ふてくされている美姫から目を離すと遠くの方から声が聞こえた。
「………いいの?」
「え?」
「呼んでるけど?」
「えっ?何も聞こえない……」
「美姫ーーーっ!」
瞬間、がらりと。
無遠慮に開け放たれたドア。
「あーっ!やっぱりここにいた!」
そこから覗き込まれたのは美姫とそっくり瓜二つの顔。
「真姫っ!」
「探したんだよ。帰ろう?」
全くどいつもこいつも。
ここが人の病室だという認識がないのだろうか。
私は病人なのに。
「お祖父様が呼んでたよ」
「はーい!」
そこで初めて私と目を合わせた女の子は首を傾げて視線だけで『誰?』と訴えかけていた。
それはこっちのセリフなんだけど。
「あっ、紹介するね!こっちは私の双子の妹の真姫!真の姫って書いて真姫!えっと、この子は……」
「……なな」
「え?」
「水崎なな」
読んでいた本から顔を上げずに呟くと、美姫はパァっと笑顔になり、真姫は。
「よろしくね」
花が咲いたように微笑んだ。


