あたしたちの悲鳴にも近い叫びに、男子とはハイタッチしていた来栖くんはこちらを向く。



「来栖くーん!」

「ナイスシュート!」

「かっこよかったよ!」



ここぞとばかりにアピールすると、来栖くんは『ありがとう』と確かに口を動かし、はにかんだ。


その威力といったら、もう。



「「イヤァアア!!」」



奇声が体育館内に盛大に響き渡る。


完璧な王子様にキュン死で殺された女は数知れず。
その場に倒れ込む集団は傍から見れば、大量の死体現場に見えるだろう。


そのうちの一人にあたしも当然のごとく紛れていて。

来栖くんの瞳は、そんなあたしを捉えることはない。



主役が来栖くんだとするなら、今のあたしの立ち位置は存在にすら気づかれない“エキストラ”といわれるものなんだと、今更気づいてしまった。



「………絶対、手に入れてやる」



そうして今日も、みんなの王子様・来栖くんはあたしを虜にさせるのだ。