最初に折れたのはあまりの勢いに押された先生のほうで、とうとう指導するのを諦めた。


体育館の端で涼みながら自分の番を待つ来栖くんも眩しくてかっこよすぎる、と文香ときゃっきゃしながら、堂々と授業をサボる。



「そろそろ来栖くんの出番じゃない?」



誰かがそう呟くと、周りがざわつきだした。
あたしもわくわくしながら心待ちにしていると、来栖くんがゆっくりと立ち上がり、コートの中に入る。


あーやばい、なんだかどきどきしてきた。


ピーッ。

先生が試合開始の笛を鳴らした。



「来栖くん頑張ってー!」

「いけいけ!」

「気をつけてね!」


「く、来栖くんファイトー!」



耳が痛い歓声に負けじと、あたしも来栖くんに声援を送る。

コートの真ん中に立つ来栖くんは、宙に浮かぶボールを華麗に自分のチームへと弾く。
そこでまた大きな歓声が上がった。


さすが来栖くん!



「来栖!頼んだ!」



男子がパスを回すと、それをしっかりと受け止める来栖くん。

素早くドリブルで敵チームを欺き、来栖くんは手の中にあるボールを放つ。
それは綺麗な弧を描き、ゴールイン。


見事に、スリーポイント…いや、ときめきのラブシュートをあたしたちのハートに決められた。