みんなから大絶賛されたポニーテールを揺らして、あたしはある人に突撃した。



「くーずーみくんっ」


「……………」



現在はお昼休み。

男子トイレの前で、あたしは来栖くんに声をかけた。


来栖くんがあの女子の軍団から離れるときを狙っていたのだ。さすがに男子トイレにまでしつこくついてくるような危ない女はいないだろうから。

鋭いあたしの考えは的中した。



「お話があるんだけど、いいよね?」



昨日、あたしは“キラキラの王子様”ではなく“腹黒な二重人格王子”を知ってしまった。

これは来栖くんの弱みだ。


握ったものは離さない!こういうのは黙って大人しくしてるより、利用してやるんだ!



「…いいよ。科学準備室に行こうか」



今まであたしが見てきた爽やかなスマイルだ。
やっぱり人前では本性がバレないように仮面を被るのか、覚えておこう。


こうなれば手中に収めたも同然。

誰もが恋焦がれる美青年、来栖くんを掌の上でころころと転がされるのはこのあたしだけ。
ヒロインにしては汚いやり方ではあるけど、新ジャンルとして考えればまだ許される範囲だと信じたい。


なにより来栖くんと急接近できるきっかけができたことが嬉しくて、ついつい軽快なステップを踏んでしまう。