教室に入ると、様々な会話で溢れかえっていた。クラスや部活、委員会の事。だが不思議と嫌な気持ちはしなかった。旺盛な会話で活気が溢れていたからだろう。


「さーちゃんの番号は?」


ゆうくんが私に問う。私は『暁』だから、大体1番。高校では1回1番。1回は相沢さんがいた。1番は本当に辛い。もう1年は……。


私は黒板に貼ってある座席表を見た。最初の数日は番号順で並んでいる。


「今回も1番かな……ファッ!!?」


その光景に目を疑った。3番だった。相沢さんと、相澤さん。3番なんて、初めて──。じゃなかった、この中1は2回目だった。はず……。


所々記憶が無い。私はそう思い立った。担任の先生は?隣の席の人は?


───分からない。


ただ、昔のことだから忘れているだけなのか。それとも……。


「……ちゃん、……さーちゃん?」


ゆうくんに声をかけられ、我に返る。考えこんでしまった。


「ごめん、ぼーっとしてて……。ゆうくんの番号は?」


「 俺は『結城』だし、後ろの方だよ。33番。小学校ん時と同じ。なんか凄い声出してたけど大丈夫か?」


私は首を縦に振る。


「少し驚いただけ。3番なんて、初めてだから」


私がそう言うと、ゆうくんは首を傾げる。


「…何言ってんだ?小4ん時3番だっただろ。……それに入学式ん時、出席番号順で並んでたし」


ファッ!!?どういうこと!?私は小学校、ゆうくんと同じ学校に通っていたって事?でも『久しぶり』って…。この久しぶりは、春休みが明けたから『久しぶり』なのか……?


────入学式の記憶は?


あれ?思い出せない……?どうして?さっきのゆうくんの話から察すると、入学式の時から番号順で並んでいた…らしい。だったら覚えていても…。さっきからの記憶障害となにか繋がりが……?


「さーちゃん!……大丈夫か?さっきからぼーっとして。熱でもあるんじゃ……」


そう言って私の額に手を当てようとするゆうくん。


「だ、大丈夫。平気だよ」


私は遠慮する。流石にそれは……。


「大丈夫ならいいけど……?」


戸惑うゆうくんに罪悪感を抱いた。


「お前ら席つけー」


そういいなが入ってきた先生。見た目は“熊”。髭が生えてて身長は2メートルありそうな勢いだ。


さっき見た座席表を元に、私は自分の席につく。


───覚えているはずなのに。


何でだろう、なんで覚えていないんだろう…。


さっきから感じていた違和感。それがかなり強くなる。


「暁沙彩!」


「はい!」


先生に呼ばれ、返事をする。


出席名簿を持った先生。全てを察する。先生は舌打ちをし、ほかのクラスメートの名前を呼ぶ。


これ以上ぼーっとしたら、生活に支障が出る。考え込まない……。今の中学校生活を楽しむんだ。


「暁ちゃん。うち、前の席の氷室里絵っていうんだ。宜しくね!」


氷室ちゃん。……駄目だ。思い出せない。


「よろしく!氷室ちゃん」


とっても可愛い氷室ちゃん。水色のカチューシャに腰まである長い金髪の髪。鼻が高くて、碧眼な所から、ガチな金髪美女なんだ…。私が男だったら一瞬で惚れてる。


今は休み時間。次は委員会や学級委員を決めるらしい。


考え込まないようにしないと…。ここにいる意味、それを毎日意識して楽しく過ごそう。博士の研究が無駄にならないように。