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何の変哲もない会社の廊下。
それが男女の愛憎劇の舞台になろうとはきっと誰も思わなんだ。
「ねえ？美味しいワインが飲めるお店があるの……。一緒に行かない？」
上目遣いでグイグイと相手の男性のスーツの袖を引っ張っているのは、我が意匠設計部きっての美人であるマドンナこと、今野先輩。
「興味ないっす」
かたや、あからさまに迷惑そうな表情でこの美女を追い払おうとしているのは最近、周防の御曹司であることが発覚した、武久。
そして、タイミング悪く出羽亀することになってしまった不運な私は、廊下の角に待機中である。
（マジか……！！）
まさか、マドンナが武久を口説いているという意外な場面に遭遇するとは！！
マドンナと噂になるのは年上の人ばかりだったから、てっきり年下には興味ないんだと勝手に思っていたがそうではないらしい。
果たして武久は今野先輩の餌食になるのか、ならないのか。
私は興味津々になって壁に張り付き、二人の様子を窺うのである。
