(悔しいっ……!!)
ミーティングルームから自分のデスクへ戻る最中も、やるせない気持ちでいっぱいになる。
……これでは誰のために、何のために作るのか、分からないじゃないか。
自分が作りたいものとクライアントが望むものが異なるケースはままある。
どんなに労力を割いてもボツになることもあるし、テキトーに考えたものが採用されることだってある。
だから、私達建築家はどこかで折り合いをつけないといけない。クライアントに迎合して、納得いくものを提供する必要がある。普通の商品と違って建築物は大金をはたいて作るものだから作り直しはきかない。
だから、こんなのよくある話だって笑って片付ければいいのに……やっぱり悔しい。悔しいものは悔しい。
(いつもなら……武久と飲みに出かけるのになあ……)
こんなことがあった日はいつもだったら武久とパーッと飲みに出かけて、美味しいものを食べて。
落ち込むだけ落ち込んで、朝になったらまた頑張ろうって気分になれるのにな。



