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あれは夢だったのか。

いや、夢でもなく紛れもなく現実に起こったことである。

唇に残った感触も、頬に残ったぬくもりも妙に生々しい。

「瞼、重……」

月曜日の朝は寝不足から始まった。

軽くシャワーを浴びて、腫れぼったくなった目元を軽くマッサージする。

フルメイクは無理だと諦めて、ファンデーションだけ塗りたくって家を出る。

電車の窓にゴツンとおでこを当て思い出すのは、金曜日の夜の出来事だった。

(気まずい……)

武久には随分とみっともないところを見せてしまった。

泣きべそかいて、抱きしめられ、慰められて。御曹司なんてコリゴリ!!なんて、愚痴まで吐いて。

その後、家まで送ってってもらったわけだけど……

うう!!

思い出すだけで顔が真っ赤になる。