予想もしないことが起こり過ぎていて、なんだかもう一杯一杯だった。
黙っているから穴が開くほど見つめないでほしい!!溶けるっ!!
切なる願いが届いたのかほどなく拘束が解かれるが、ホッと一息つくにはまだ早かった。
「そうだ。万年筆を拾ってくれたお礼に今度食事でも行かない?」
「え!?」
御曹司サマ直々のお誘いである。驚かないはずがない。
「嫌かな?」
「いいえ!!とんでもないです!!」
断る理由などなかった。周防の御曹司様とお近づきになれるなんて願ってもない。
「……じゃあ、連絡先を教えて?」
先ほど返したばかりの万年筆を差し出され名刺の裏に連絡先を書くと、田辺さんはあとで連絡すると言って会議室から立ち去って行った。
未だに夢見心地の気分でふきんを握りしめる。
(すごい……)
私ってば周防の御曹司様とデートの約束をしちゃうなんて!!



