(うわあ……いかにも高そう)

質感といい、持ち心地といい、一目で贅沢品とわかる万年筆である。

目立った傷が出来ていないことに安堵すると、今度は持ち主が気になってくる。

(誰のだろう?)

手掛かりはないかとくるくると万年筆を回してみると、幸いなことに名入れがしてあった。そうでなければ会議に出席していたひとりひとりに尋ね歩く羽目になるところだった。

アルファベット、筆記体で書かれた文字をひとつずつ音読する。

「ス……オ……ウ……」

(ん……?)

声を発した自分自身が一番信じられなかった。

「周防!?」

耐えきれずに叫び出したところで、タイミングよく会議室の扉がノックされる。

悪いことをしているわけでもないのに、なぜかビクンと肩が震えた。どうぞと返事をする間もなく会議室の扉が開いていく。