(なにこれちょう痛いっ!!)

男はスーツの袖をまくり、痛みにも悶え苦しむ私を嬉々として眺めていた。

「うっせーよ。静かに呑んでろ。このクソ酔っ払い!!」

丸めた新聞紙がビジネスマン御用達の経済新聞なのがまた鼻につく。

うら若き乙女の繊細な後頭部をあっさり叩きやがって、血も涙もないのかこの男は。

「武久のバカーー!!ひとでなしいいい!!叩かなくたっていいでしょ!?」

ひどくない!?この扱いひどくない?

はたかれた頭を擦りながら猛抗議すると、武久は威嚇するように即席のハリセンをパンパンと威勢よく鳴らした。

「バカには言って聞かせる時間も労力もない。実力行使、一択だ。もう一発要るか?」

「要らないっ!!」

ムキになって言い返すと武久はククっと低く笑い、新聞紙をビジネスバッグの中にしまった。