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それにしても、周防の御曹司様とは一体どんな人なのだろう。

本当に周防の御曹司が存在するのなら、とっくに役員クラスの役職についていてもおかしくない。

正体を隠して働いているということは表舞台には立てないよっぽどの事情があるのか。

女性関係が派手とか?ギャンブル癖があるとか?

ああ、ダメだ。

あのおっぱい野郎が随分と後を引いていて、悪い想像しかできない。

「わかっち……周防の御曹司様ってどんな人なんだろうね?」

「杏、そっちの片付けは終わったの?」

冷たい……。わかっちが冷たい……。

北極の氷より冷たいわかっちの冷ややかな視線にさらされて、心臓がきゅっと小さくなる。

「ご……ごめん。すぐやるね」

御曹司様のことを考えていて、ついつい手が止まってしまっていた。

私は急いでテーブルの上に置かれたスティックシュガーや使いきりタイプのコーヒーミルクのゴミをまとめてゴミ箱に捨てた。