闇雲に探したところで簡単に見つからないのは、きっとその正体を周囲に隠しているからだろう。

そもそも、周防建設の本社社員だけで千人以上いるのだ。支社を含めれば更にその5倍はいる。

身体的特徴も、年齢もわからない人物を探すのにはさすがに無理があったのか。

私は疲れ切った身体を癒すようにコンビニで買ったサンドイッチ(320円)をはむっと口一杯に頬張った。

100円の野菜ジュースとサンドイッチでは贅沢なランチとは言えない。

なけなしのお金で買ったサンドイッチからは涙の味しかしない。

ひもじさと、切なさと、口惜しさは計り知れない。

「うう!!わかっち~!!」

「はいはい。よーしよし」

うわーんと半泣きになってお膝に泣きつくと、わかっちは子供をあやすように頭を撫でてくれた。

周防建設ご自慢の自社ビルのテラスは全社員に開放されていて、一番端にあるベンチは晴れの日でも木陰で涼めるお気に入りのランチスポットなのである。