「奥さん、綺麗な人ですね」
当てずっぽうのつもりだったが、これがまさかのビンゴとは!!
「……だから、何?」
田辺さんの目力は明らかに弱まり、私は嬉々として畳みかける。
「田辺さんと結婚するなんてどんな人かと思ったら、随分繊細そうですね。腹黒い本性を知ったら、倒れたりしませんか?」
武久のお姉さんっていうから、女版武久って感じの武骨な人をイメージしていたけれど、そうとも限らないようだ。
風が吹いたら折れてしまいそうな透明感とたおやかさを兼ね備えていて、守ってあげたくなるようなタイプに見える。
「繊細……?」
次の瞬間、田辺さんは堪えきれず爆笑とも思えるような大きな笑い声を上げたのだった。
「なっ!!なんで笑うんですか!!」
なぜ笑われたのか意味が分からず私は田辺さんに再び噛みついた。
「お生憎様。少し考えればわかることだろう?彼女は福子様の孫であり、あの周防社長の娘だ。君が考えているような性格のはずがないだろう?」
周防社長と福子様の顔がポンポンっと頭の中に浮かび、そして消えていった。
うわあ……。納得したくないのに、納得できちゃった。
言った通りだろう?と、ふふんと鼻を鳴らして勝ち誇る田辺さんに対して、圧倒的な敗北感しか抱けない。



